日本の値段
安いディナー、高いチーズ、そして円の不思議な計算法
先日、北海道へ旅行した際、スイスから兄が遊びに来たのだが、彼にはすぐにある癖がついた。 何かを買うたびに、彼は頭の中でその値段をスイスフランに換算するのだ。
そして、きまってきょとんとした顔をする。 「何かの間違いじゃないか?」 物価がこんなに安いわけがない、というのだ。
しかし、現実に安かった。少なくとも、彼にとっては。
前菜にデザート、ワインまで付いた豪華なディナー。スイスなら目玉が飛び出るような請求書が届くところだが、ここではちょっとした「お買い得品」のような値段だった。
もちろん、日本に住む私たちにとっても十分に安かった。有利な為替レートという恩恵を抜きにしても、日本の外食費は他の多くの国に比べれば驚くほど手頃だ。
ところが、ホテルとなると話は別だ。
北海道で宿泊した4つ星クラスのホテルは、ツインやダブルの1泊料金が、昨年スイスやイギリスで泊まった同等クラスの宿より40%ほど高かった。
幸い、この計算をしたのは旅行から戻った後だった。 もし行く前に気づいていたら、旅行自体を考え直していたかもしれない。
なぜ日本がこれほど外国人観光客を惹きつけるのか、その理由は明白だ。 長年、日本は「世界で最も物価の高い国の一つ」というイメージを持たれていた。
しかし、その評判も今や時代遅れに感じる。 約6年前、1スイスフランはおよそ100円だった。
それが今では、1フランで200円近く(※原文の比喩的表現に基づき、100円=0.5フラン相当)買える計算になる。
スイスを訪れる日本人旅行者にとっては、スイスのインフレを考慮するまでもなく、実質的に物価が2倍になったことを意味する。
逆にスイスから日本へ来る人にとっては、日本は実質的に「半額セール」状態なのだ。
ただ、一つ小さな問題がある。 私はここに住んでいる、ということだ。 つまり、買い物に行っても為替レートの恩恵には預かれない。
特に、輸入食品を買う時は痛みを伴う。 最近の輸入品には、二つのサイズしかないようだ。
「ミニサイズ」と「マキシ価格(超高値)」である。
先日、スイスの懐かしいおふくろの味「コルドン・ブルー」が無性に食べたくなった。 日本の肉屋には既製品のコルドン・ブルーなど置いていないので、自作する必要がある。
豚のカツレツ用の肉、ハム、そしてチーズ。 用意するのはそれだけだ。至ってシンプルである。 ……エメンタールとグリュイエールチーズの値段を見るまでは。
私は棚を凝視した。 棚も私を凝視し返した。 この値段では、私のコルドン・ブルーはベジタリアン料理になってしまう。
そこで代わりのものを探した。 そして、見つけた。 北海道のすぐそば、十勝産のチェダーチーズだ。 スイス産チーズの半額以下だった。
コルドン・ブルーのレシピでチェダーを勧めているものなど見たことがない。
だが、日本でのエメンタールの値段を直視した人間が書いたレシピも、また見たことがない。
とにかく試してみた。 すると、どうだろう。 最高に美味しかったのだ。
ここから学べる教訓があるかもしれない。 スイスからの旅行者にとって、今の日本は素晴らしく安いだろう。
しかし、ここに住む私たちにとっては、依然として「安心の(?)高価格」を維持しているものがある。
特に、それがスイスの国旗に包まれてやってくる場合は。
幸い、私たちにはいつでも北海道産のチェダーがある。




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