スイス流「シュリンクフレーション」
- rowiko2
- 21 時間前
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本記事は、2025年10月22日に英語で公開されたものです。
またこの魔法のような季節がやってきました。空気は澄み渡り、木々の葉は黄金色に染まり、私の「内なるスイス人」が子供時代を思い出させるスイスの味を求めて叫び声を上げています。そうです、冬の到来です。それはつまり、お腹も心も温めてくれる乳製品の傑作、ラクレットとフォンデュへの抗いがたい渇望の季節でもあります。
というわけで、私はお気に入りの高級スーパーへと勇んで向かいました。頭の中では、グツグツと泡立つチーズとカリッとしたパンがダンスを踊っています。この店は常にアルプスの安らぎを提供する信頼できるオアシスでした。エミ(Emmi)社のフォンデュ(標準的な400gパック)や、夢のように溶ける素敵なフランス産ラクレットが置いてあったのです。
しかし、ボブ・ディランも歌ったように、「時代は変る(The Times They Are A-Changin')」のです。もっとも、彼がチーズのことを歌っていたわけではないと思いますが。
まずはラクレット。スイスのスーパーでは、どこにでもあります。棚には、想像しうるあらゆるフレーバー(ガーリック? もちろん。ペッパー? 当然。ユニコーンの涙? たぶんあるでしょう)のスライス済みラクレットが並んでいます。
日本では、技術的には「選択肢」はあります。しかし、それを満足のいくものと呼ぶのは、マクドナルドを五つ星のダイニング体験と呼ぶようなものです。
選択肢1:普通のスーパー。 はい、たまにラクレットチーズがあります! しかし、その量は顕微鏡レベル(100g!)です。脳外科医のような精密さでスライスしたとしても、ダイエット中のラクレットにしか見えないでしょう。
選択肢2:幻のチーズ専門店。 まず見つけるのが大変です。見つけたとしても、住宅ローンを組まなければならないほど法外な値段に覚悟してください。一度行けば、次の氷河期までラクレットは断とうと誓うことになるでしょう。
選択肢3:ネットでスイスチーズをホール(丸ごと)買い。 ロマンチックでしょう? 持ち上げるのにジム通いが必要で、保存するための地下室と、切るためのチェーンソーが必要だと気づくまでは。
選択肢4:フランス産のスライス済みラクレット。 完璧なサイズ、完璧な利便性……そして完璧な裏切り。チーズと一緒に国家の誇りまで溶かしているような気分になります。食べている間、スイス人の先祖が泣いている微かな音が聞こえることでしょう。
母国では、一般庶民は便利なスライス済みパックを選び、効率を重視します。ですから、文化的・国家的な反逆罪を犯していると知りつつも、ここでもそれが最も実用的(かつ手頃)な選択肢のように思えます。
しかし今回、ラクレットはどこにもありませんでした。棚を確認しました。カマンベールの後ろも確認しました。必死なチーズ探偵のようにしゃがみこんで下の棚まで調べました。ない。ラクレットは消滅していました。
フォンデュの方はまだ運がありそうでした。ありました。愛するエミのフォンデュが棚から微笑みかけています……しかし、何かが変です。小さく見えます。疑わしいほど小さいのです。手に取って息を飲みました――250g。これはフォンデュではありません。試供品です。さらに追い打ちをかけるように、名前が「フォンデュ・プティ(Fondue Petit)」になっていました。プティ(小さい)だって?! これはフォンデュであって、マカロンじゃないんですよ! スイスではフォンデュパックは800gで、2人分――一人が「そんなにお腹空いてない」ふりをしているなら3人分――です。この「プティ」版は2人前だと主張していますが、それはつまり「チーズが嫌いな2人」という意味だと解釈するしかありません。
ああ、そしてお値段は? 当然、据え置きです。ようこそ、「シュリンクフレーション(実質値上げ)」の時代へ――お気に入りの商品が静かに減量していく世界です。
これ以上ズルいことはないだろうと思った矢先、別のことに気づきました。
かつて日本の店は税抜価格を表示しており、レジで常に10%のサプライズ加算がありました。これを修正するため、政府は他国と同様に税込価格の表示(総額表示)を義務化しました。高潔で透明性のあるアイデアです。
ただし……法律は「税抜価格を表示してはいけない」とは言っていなかったのです。
そのため今では、多くの店が誇らしげに、小さい方の「税抜価格」を巨大で太い赤文字で表示しています――そして本当の「税込価格」は、後ろめたい秘密のように、その下に顕微鏡サイズで隠れているのです。
私たちの行くスーパーは、かつては正直な店の一つでした。もう違います。彼らもダークサイドに落ちてしまいました――太字の赤い税抜価格を前面に出し、真の価格はずっと小さく下に書き、客が気づかないことを祈っているかのようです。
偶然でしょうか? そうは思いません。あらゆるものの値段が上がっている時、本当の値段を見えにくくする以上のトリックがあるでしょうか?
というわけで、私はチーズを腕いっぱいに抱えて帰る代わりに、手ぶらで、そして少し裏切られたような気分で店を後にしました。
幸い、オンラインショッピングが救世主となりました。危機は回避され、フォンデュとラクレットは確保されました。妻と私は、チーズの喜びなしに冬を飢えて過ごす必要はなさそうです。







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