スイスと日本の共通点とは?
- rowiko2
- 12月10日
- 読了時間: 8分
本記事は、2023年9月22日に英語で公開されたものです。
世界地図の全く異なる場所に位置する二つの国。一方は日本海と太平洋に挟まれた島国であり、もう一方はヨーロッパの中心にすっぽりと収まった内陸国で、最南端ですら最寄りの海岸から160kmも離れています。
片や人口870万人で毎年0.7%ずつ増加している国、片やその15倍もの人口を抱えながらも毎年0.5%ずつ減少している国。
計算が得意な方なら、いつ両国の人口が並ぶか予測できるかもしれませんが、皆様の手間を省くために私が計算しておきました。現在の推移のままいけば、2243年に両国は「4100万人」という魔法の数字で並ぶことになります。スイスは増加し続け、日本は減少し続けて……。
不老不死の薬が発明されない限り、私たちがその歴史的瞬間を目撃することはないでしょうが、確実にその未来に向かっていることだけは間違いありません。
もちろん、そんなに増えた人口をスイスのどこに収容するのかという些細な問題はありますが、それは未来の政治家たちに悩んでもらうことにしましょう。
スイスの人口の約30%は移民で構成されており(人口増加の理由がお察しいただけるかと思います)、一方の日本は2%未満です。これに少子化を組み合わせれば、なぜ日本の人口が減り続けているのかも一目瞭然です。
国土面積に関しても、スイスは日本の9分の1程度しかありません。
大きさも違い、文化、歴史、言語、宗教も全く異なる二つの国。車の通行方向も逆です(どちらが「正しい」側でどちらが「間違った」側かについては、意見が分かれるところでしょう)。違いを挙げればきりがありません。
鋭い読者の皆様はもうお気づきでしょう。「ここまで挙げているのは、共通点ではなく相違点ばかりじゃないか」と。ええ、まずは違いを片付けておきたかったのです。
では、本当の共通点は何でしょうか? 一見するとほとんどないように思えますが、実は意外とあるのです……。
まずは誰もが真っ先に思い浮かぶ、それぞれの国を象徴する「山」から始めましょう。
独特なピラミッド型をしたスイスの「マッターホルン」を知らない、あるいは写真すら見たことがないという人は少ないでしょう。もっとも、標高はスイスで一番高いわけではないのですが、最も写真に撮られている山であることは間違いありません。
伝説によれば、世界中で愛されているチョコレートバー「トブラローネ」の形は、この象徴的な山に由来すると言われています。しかし、物事は見かけ通りとは限らないものです。
100年以上前にこのチョコを考案した人物の子孫によると、実はパリの有名なキャバレー「フォリー・ベルジェール」のダンサーたちがショーの最後に作る隊形がモデルなのだとか。これを聞いてガッカリしたなら、私と同じです。真実を知ることが必ずしも良いこととは限りませんね……。
同様に、「富士山」といえば日本そのものです。富士山のイメージなしに日本を語ることはできません。
雪を頂いた完璧な山頂、手前に広がる桜と湖、そして静寂に包まれた姿を見ていると、地質学者たちがこれを「活火山」とみなしており、最後の激しい噴火がつい300年前だったとは信じがたいかもしれません。ここだけの話、いつ手遅れになるかわかりませんから、行けるうちに行っておくことをお勧めします……。
少なくとも日本人は、この最高峰を独占できます。対してスイス人は、象徴的なマッターホルンを(厳密には)イタリア人と共有しなければなりません。国境線上に立っているからです。イタリア人はこの山を全く別の名前で呼んでいます。「チェルヴィーノ(Cervino)」なんて聞いたことありますか? ないですよね……。
とはいえ、場所があやふやでも、誰もスイス人がこの山を「自分たちのもの」と主張することに異を唱えません。イタリア人もです。おそらくイタリア人は、自分たちがすでに十分良い思いをしていることを知っているからでしょう。もっと良い気候(夏には太陽を求めて北欧の人口の半分が押し寄せます)、息をのむような海岸線と砂浜、ファッションの中心地ミラノ、永遠の都ローマ(おまけにその中心にはミニ国家まである)、そして豊富なユネスコ世界遺産。だから、アルプスの山一つくらいスイスに譲っても、痛くも痒くもないのかもしれません。
ああ、そうそう、「アルプス」といえば、これもスイスと日本の共通点ですね。
フランスからスロベニアまで8カ国にまたがり、1,200kmも続く有名な「アルプス山脈」(説明不要の本家本元)があります。
そして日本には、本州を二分する「日本アルプス」があります。この名称は、19世紀後半にイギリス人考古学者ウィリアム・ゴーランドがいくつかの峰に初登頂した際に名付けたものです。もちろん、それ以前から山はそこにありました。日本アルプスがある日突然地面から生えてきたわけではありません。実際、日本人は1600年代から山脈周辺の谷を探索していましたが、わざわざ山脈全体に名前をつけるのが面倒だったのかもしれません。優先順位が違ったのでしょう。
そこにイギリス人がやってきて、自分の足跡を残す好機と考えたわけです。実のところ、彼が名付けた当初は105kmほどの山脈を指していましたが、現在では200kmにわたる範囲を指し、「北アルプス」「中央アルプス」「南アルプス」ときれいに分類されています。
おそらく人々は、元の範囲だけではヨーロッパの「本物」に対抗するには少し物足りないと感じ、少しアップグレードする必要があると思ったのでしょう。
言うまでもなく、日本アルプスはそれ自体が素晴らしく、3,000メートルを超える峰がいくつもあります。そして富士山と同じく、日本人はこれを誰とも共有する必要がありません。対してスイスが「所有」しているのはアルプス全体のわずか13%。オーストリアとイタリアが大部分を占めているのです。ショッキングでしょう?
さらに言えば、スイスはアルプスの最高峰を自慢することもできません。その栄誉は「モンブラン(白い山)」に与えられていますが、これはフランスにあります――あるいはイタリアに。聞く相手によって答えは変わります……。
どうやら何世紀にもわたり、モンブランの所有権を巡って多くの論争があり、地図が書き換えられるたびに山頂はフランス領になったりイタリア領になったりしてきたようです。なぜわざわざ国境線の真上に山を置く必要があったのでしょうか? おっと、国境という概念が生まれる前から山はそこにあったのでしたね……。
所有権争いの最適な解決策は、いっそスイスにあげてしまうことでしょう。どうせスイス国境からそれほど遠くありませんし、スイスは有名な中立国ですから、きっと山頂を大切に管理してくれるはずです。それに、日本の多くの人々はモンブランがスイスにあると思っています。マッターホルンやユングフラウ(007映画で有名になりましたね)があるなら、モンブランもスイスでいいじゃないか、と。理にかなっていますよね?
しかし地図と国境線を見れば、日本人でなくても混乱するのは無理もありません。
その点、島国である日本にはそういった問題はありません。多くの日本人にとって、陸の国境という概念は馴染みがないものです(しゃれではありません)。まあ、いくつかの島を巡る領土問題という些細な件はありますが、それには触れないでおきましょう……。
賢明な読者の皆様は、私が山について随分と長く語っていることにお気づきかもしれません。私は断じて登山家タイプではありません。少年の頃の夏休みは、ほぼ例外なくスイスの山で過ごしましたが。他の家族たちがこぞって南へ――フランス、イタリア、スペインなど、まともなビーチと太陽が約束された場所へ――大移動する中、私の両親は子供たちにアルプスの清らかな美しさを「体験」させたいと考えていました。「体験」とはつまり、何時間も延々と山を登り降りさせられ、翌日には存在すら知らなかった筋肉が痛くなる、という意味です。
いいえ、私が山について長々と語った理由は単純です。両国の地理において山が大きな割合を占めているからです。スイスの約60%が山岳地帯であるのに対し、日本はなんと73%が山地なのです!
もっとも、私が山の近くで育ったわけではありません。スイスは小さな国ですが、私の実家からアルプスまでは車で2時間ほどかかります。もっと近くにもそれなりの山脈はありましたが、両親にとって近場の「二流の山」では不十分だったらしく、兄と私を遠く離れた場所へと連れ回しました――まあ、南北220km、東西350kmしかない国で「遠く離れた」と言ってもたかが知れていますが。

おかげで、アルプスの絶景スポットはいくつか制覇しました。
マッターホルン:チェック済み。もちろん山頂近くではありませんが、その雄大な姿を目の前で拝める場所までは行きました。

アレッチ氷河:チェック済み。聞かれる前に言っておきますが、はい、ロープに繋がれて氷河を横断しました。氷の景色に点在する危険なクレバスのかなり近くまで行きましたよ。当時はまだ氷河も立派な大きさでしたが、悲しいことに気候変動で徐々に消えつつあります。昨年だけで体積の6%以上が失われたのです!

ユングフラウヨッホ:うーん……これはパスで。標高3,000メートルという驚異的な高さにあるトンネルとアイガーの岩盤を抜ける鉄道で、いわゆる「トップ・オブ・ヨーロッパ」まで簡単に行けるにもかかわらず、実際に行ったことはありません。それは外国人観光客とジェームズ・ボンドにお任せします。
このように、山は間違いなく両国にとって大きな存在です。唯一の大きな違いは、スイスの山頂にはほぼ間違いなく巨大なスイス国旗があることでしょう。これはおそらく、訪問者に対して「ここは間違いなくスイスですよ、うっかりイタリアやフランスの山に登ってしまったわけではありませんよ」と安心させるためです。先ほど触れた通り、国境が曖昧なので簡単に起こり得ますからね。一方、日本の山に登っても、国旗を見つけるのは難しいでしょう。うっかり外国の領土に迷い込んでしまう可能性が極めて低いからに違いありません。
(続く……)






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