「名前のない通り」の国
- rowiko2
- 4 日前
- 読了時間: 5分
本記事は、2024年4月29日に英語で公開されたものです。
日本国外の多くの人にとって、ここの通りのほとんどに名前がないことは驚きでしょう。主な例外は幹線道路や高速道路、有料道路くらいです。しかし、ごく普通の住宅街の通りには、名前がありません。
なぜでしょうか?
日本では明治時代(1868 - 1912)に遡る、非常に複雑なエリアベースの住所システムを採用しているからです。
町は通常、名前のついた小さなエリア(町丁)に分割され、さらに番号のついた小さなブロック(番地/街区)に、そして最終的に個々の区画(号/住居番号)に分割されます。そのため、他国に比べて住所が長くなるだけでなく、多くの数字が含まれることになります。
さらに面白いことに、区画は作られた順に番号が振られることがあるため、順序通りではない場合があります。住所を探すときは、正しいブロックを見つけ、その周りを歩き回って正しい家を見つけなければなりません。「通りに沿って番号が振られる」という概念はないのです。

我が家には4つ目の数字さえあり、フルネームならぬ「フルナンバー」は「2-15-12-1」となります。さらにややこしいのは、左右の3軒と同時に建てられた家なのに、番号が連番ではないことです。
現代のテクノロジー社会では、もちろんGoogleマップやカーナビがあり、(多かれ少なかれ)希望の目的地まで連れて行ってくれます。
それでも、例えば配達ドライバーにとっては、正しい住所を見つけるのは至難の業です。お隣さんも国際結婚カップルなので、Uber EatsやAmazonの配達員はよく混乱しています。4軒並びの列までは絞り込めても、最後のステップとして玄関の表札(家には番号が表示されていないことが多いので)に頼らざるを得ません。そして、どちらの名前も外国名(全く違う名前なのですが)なので、彼らは日常的に間違えて、違う家に配達しようとします。誰かが家にいれば正しい家に誘導できますが、そうでなければ、二つの家族の間で時折「荷物の交換会」が発生します。お互いに仲が良くて幸いです……。
タクシー運転手にとっても、ここは簡単ではありません。私はいつも、ロンドンのタクシー運転手と、彼らが挑む伝説的な試験「ナレッジ(The Knowledge)」に感嘆していました。チャリング・クロスから半径6マイル以内の25,000の通りと100,000のランドマークを暗記する必要があり、資格を得るまでには最大4年、十数回の面接を経なければなりません。
日本はそうではありません。ここでタクシー運転手の免許を取るには、95問のテスト(50分間)に合格し、少なくとも90%のスコアを取る必要があります。問題が決して簡単ではないとは聞いていますが、東京のタクシー運転手に何千ものランドマークや通りの名前(そもそも存在しませんし……)を暗記することを期待する人はいません。
タクシーにカーナビが標準装備される前は、運転手に住所を告げても肩をすくめられるだけでした。火星の住所を教えるのと変わらなかったからです。ですから、道順を指示して運転手を誘導するのがお決まりのルーチンでした。自分がどこに行くか分かっていれば、ですが……。
行ったことのない場所へタクシーで行き、すぐに道順を聞かれたり、どのルートが一番早いか聞かれたりすることも珍しくありませんでした。私が知るわけないのに……。夜飲み歩いた後、タクシーで帰宅する時もそうです。住所を忘れるほど泥酔してはいないものの、はっきりと喋ったり現在地を把握したりするには酔いすぎている場合、この問題はちょっとした試練となります。
幸い最近では、運転手がナビに住所を入力してくれます。もっとも、多くの場合、彼らはまだ客に道順を聞くのを好みますが。少なくとも、必要であればテクノロジーが助けてくれます。
通りとは違って、多くのアパートやマンションには名前があり、その形や大きさ、そして言語も様々です。近所を散歩しているとき、建物の名前を読むのは非常に興味深く、そして面白いものです。
まずは英語の選択肢。「Grace(優雅)」や「Prominence(卓越)」が溢れる建物に住むか、「Comfort(快適)」を示唆する場所に住むか、どれも魅力的な場所に思えます。
「Honey Creative(ハニー・クリエイティブ)」の意図はよく分かりませんが、なんだか居心地が良さそうなので、アリではないでしょうか?

近所では、イタリア語を選んだケースもかなりあります。「Very Good(モルト・ベーネ)」、「The Good Life(ドルチェヴィータ)」、あるいは「Queen's House(カーサ・レジーナ)」なんていう名前の場所に住みたくない人がいるでしょうか?「Belluce(ベルーチェ)」は実際には何の意味もありませんが、響きはいいですね……。

あまり一般的ではありませんが、地中海の雰囲気を醸し出しているのがスペイン語の名前です。「Blue Sky(シエロ・アスール)」や「Laliguras(ラリグラス)」など。後者はスペイン語のように聞こえますが、イタリアのリグーリア州(Liguria)に関連があるのかどうかは定かではありません。でも、地中海の雰囲気を狙っているなら、それもまた良しとしましょう。

そしてフランス語です。日本語の音節(カタカナ)ではフランス語の音を正確に反映できないため、日本人にとって発音が難しいことを考えると、珍しい選択に思えます。それでも、未来(「Le Futur」)、大空(「Grand Ciel」)、幸せな場所(「Bonheur」)、茶色の家(「Maison de brun」)、あるいは単に自宅(「Comme chez soi」)に住むことを選べます。

建物のデザインに合う適切な言葉がどの言語にも見つからないと建築家が感じた場合、フランス語っぽく聞こえるけれど実際には意味のない造語(「Chamveil:シャンベール」など)に走ることもあります。実はこれ、建物の名前だけでなく、レストランやその他のビジネスでも日本では驚くほど人気があります。そろそろフランスのアカデミー・フランセーズに申請して、辞書に追加してもらうべき時期かもしれません……。
私の個人的なお気に入りは「La Vie en Flowerie(ラ・ヴィ・アン・フラワリー)」です。フランス語の魅力と、英語の造語の組み合わせ。住むにはとても可愛らしい場所に聞こえることは認めざるを得ません。

こうした革新的で響きの良い建物の名前は、たとえ特定の住所を見つける役には立たなくても、通りの名前がないことを補って余りあるものだと思います……。






コメント